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プロフェッショナルへの「道」-spinoff 塩見一朗氏-

デザイナーは一歩引いて、客観的な視点をもって、どのようにすればそのお店が街に溶け込み、違和感なく風景を構成する要素となっていくかを考えなくてはなりません。
オーナーや消費者の利益を生み出すことも大切ですが、中立的に考えて、すべてに良いと思えるものを構築するためのバランス感覚を、デザインの中にひとつまみ、潜ませておくことが大事なのです。

spinoff 代表、塩見一郎氏は、「デザイン」に対する想いをこのように表現します。
「プロフェッショナルへの道」第3回特集は、商業施設のデザインにとどまらず、様々な分野で活躍されている塩見氏をフィーチャーし、デザインに対する想いを探っていきます。

・現在、独立されて20年余り経ちますが、塩見氏は、いかにして『デザイナー塩見一郎』になっていったのでしょうか?
私は高校卒業後、芸術大学に入学したのですが、その時にはデザイナーになるのだ!というリアルな意識は全然ありませんでした。入学当時の80年代は、ちょうどコピーライターという仕事が取り上げられていた時期で、広告業界が面白いと思われ始めたころです。そのような影響もあり、私も広告業界に入ろうと思って芸術大学を選びました。

卒業する年にアルバイトをしていたお店の店長の紹介で、初めて本物のインテリアデザイン事務所、[インテリアデザインオフィス ノブ]を訪れ、本物のデザインとそのセンスに感銘を受けました。それで、ぜひここに弟子入りさせてください!とお願いしたのです。学校では実務に関してあまりリアルな情報がなく、具体的なデザインの仕事のイメージを持ちづらかったので、実はインテリアデザインを勉強しているといっても、あまりはっきりと目標にしてはいなかったのですが、その時から本当にデザインを仕事にしていくイメージが出来ました。

大学卒業後、[インテリアデザインオフィス ノブ]に入社し、東京の事務所の所長になったのですが、実はその当時は将来独立しようとは全く思っていませんでした。ただ時代はバブル絶頂期、バブルが崩壊後、東京事務所を一旦閉めようかという話になりました。それが独立するきっかけになったのです。入社1年目から東京事務所の所長をしていましたので、元から責任ある立場にありました。そのため、他の事務所へ移ろうなどとは1度も考えず、とにかくどのように今居る事務所をより良くしていくのか、そんなことばかり考えていました。そういう意味では、独立の前と後で何かが劇的に変わったということはありませんでしたね。事務所の場所も人も、そのまま委譲された形でしたし。

独立する前後、そのころはちょうど時代として、インテリアデザイナーが建築に関わり始めたころでした。私も、当時働いていた事務所の先生ともども建築に興味があり、建築とインテリアデザインの関わりは自然なことだと考えていましたので、資格を取り建築事務所としても登録しました。ですが、やはりインテリアがベースになっているので、インテリアデザインの仕事がどうしても主になりますし、インテリアデザインと建築とでは仕事を進める上で色々な部分が微妙に違うんですね。本格的に行っていたわけではないので、一人で建築をやっていくのは難しい部分もありました。現在ではデザイン事務所と建築事務所と一体になって、チームとしてやっていくという形になっていますね。

独立当時はやはり様々な面で大変でしたが、どんな仕事であっても、一つ一つまじめにやっていくことで次の仕事へと繋がっていっていましたね。今では紹介で主に仕事を行っていますが、やはり前のデザイン事務所の先生には本当にお世話になりました。仕事の仕方など大変大きな影響を受けましたね。独立してからはなかなかお会いする機会はありませんが、変わらず大変尊敬しています。
・84年からインテリアデザインの業界で活躍されて20年余りですが、現在までの間にこの業界の中で変わったこととは?
以前であれば、デザイナーの存在はちょっとした作家のようなもので、自分の価値観が表現されたデザインを「作品」と捉え、事業主や消費者のことを考えていないようなことも見受けられました。現在では事業主の持つビジネスモデルやビジネスイメージを、いかに具現化していくのかが重要になってきていると思います。

以前、飲食店は個人店舗が主で、なかなかインテリアデザインに予算を取れない状態でしたが、企業が飲食事業に進出するようになって商業デザインというものがかなり一般的になり、インテリアデザイン自体の認知度も向上しました。その影響も大きいと思います。

・デザイナーにとって大切なこととはどんなことでしょうか?
オーナーは、自分のお店を良くすることにどうしても気持ちを注いでしまうものですから、デザイナーは一歩引いて、客観的な視点をもって、どのようにすればお店が街に溶け込み、違和感なく風景を構成する要素となっていくかを考えなくてはなりません。場を読み、オーナー、消費者、周辺の人々など、全ての人にとって良いデザインを作り出さなければ、お店がどんなに優れたセンスの建築であっても、その良さが伝わりませんし、ひいてはお店の良さも伝わらないのです。

出店されるオーナーには当然強い理想や価値観があります。でもそれが実のところは消費者の目線に立てていなかったりします。かといって、消費者側の感性にばかり合わせても利益を生み出せません。ですから、オーナーの主張や意見を聞きつつも、完全にその通りにするのだけではなく中立的に考えて、すべてに良いと思えるものを構築するためのバランス感覚を、デザインの中にひとつまみ、潜ませておくことが大事なのです。
・塩見さんがスタッフに求めるものをお聞かせください
まずは自主性ですね。出来る、出来ないは別として、「自分ならこうする」というアイデアを常に持つ姿勢、全てにおいて自分で考える姿勢が必要だと思います。それが将来、自分なりのデザインスタンスにつながっていくものだと思うからです。

・求職者の方にメッセージをお願いします
とにかく何でも自分で常に考え続けることです。何も考えずに何かをするのと、考えて行動するのとでは全然違います。例えばスーパーのレジのバイトをしていても、重いものを下にした方がいいとか、考えてやるとやらないとでは全然違いますよね。もちろん業界に入った最初は、簡単な作業から始めると思います。でも、その簡単なことをいかに工夫して、確実にきっちりしていくかということは後々まで大事なんです。

デザイン事務所では、コピーを取る仕事がしばしばあると思いますが、コピーのとり方ひとつとっても、出したい効果をいかにコピーして出すのか、工夫していく必要があるのです。うまく表現できないのをコピー機のせいにするのではなく、自分の工夫で、力で、いかに出していくか。考えることが大事なんです。そして、そういったことを生活レベルでも考え続けることができ、また考え続けることを楽しめる能力が大切です。コピーひとつとっても、うまくいったら人に喜んでもらえますし、自分もうれしいですよね。その小さな一つ一つの積み重ね、それが「デザインしていく」ということなんです。

・最後に塩見さんの今後の目標などをお聞かせください
この10~20年でデザイン業界は大きく変化し、デザイナーは作家視点から商業視点に変わってきました。その移行と共に、建築やグラフィックデザインなどあらゆるものが業界を超えて、ボーダーレスになってきています。その全てを私一人が出来るわけではありません。それぞれに関して能力のある人たちで集まって、一つのことに取り組んでいく仕事をしていきたいと思っています。積極的に彫刻家の方や、グラフィックデザイナーと連携した仕事をしたり、またブランディングの一部としてインテリアデザインを検討したりと、ニーズに応じていろんな人と組んで仕事をしています。このチームをどんどん強化して、いつも最適なデザインを提供していきたいです。

[プロフィール]
1962 兵庫県生まれ
1984 大阪芸術大学デザイン科 卒業
1984 インテリアデザインオフィス ノブ 入社
1992 イズアーキテクツ&アソシエイツ 設立
1999 スピン・オフ有限会社 設立

[主な実績]
XEX WEST(大阪)
XEX DAIKANYAMA(代官山)
ザ キッチン サルヴァトーレ(六本木ヒルズ・名古屋・京都・上海)
ル ショコラ ドゥ アッシュ(六本木ヒルズ)
日本料理 An(六本木ヒルズ)
スープストックトーキョー(各店)

spinoff
URL:http://www.spinoff.cc
設立年月日:1999年3月20日
本社所在地:東京都渋谷区恵比寿南2-8-2 キョウデンビル6F
代表:塩見 一郎 (Ichiro Shiomi)

※この記事は2006年に作成された内容です。

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