公開日:2024年12月13日
(更新日:2024年12月13日)
RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト/写真提供:公益財団法人日本デザイン振興会
1957年、通商産業省が定めたグッドデザイン商品選定制度を継承し、現在では公益財団法人日本デザイン振興会が主催しているグッドデザイン賞。ただ単にものの優劣を競うのではなく、審査のなかでの発見を社会と共有し、デザインによって暮らしの質を高めようとする仕組みです。
2024年11月5日、そんなグッドデザイン賞のなかでも年度の最高賞である「グッドデザイン大賞(内閣総理大臣賞)」が発表されました。受賞したのは株式会社ジャクエツによる『RESILIENCE PLAYGROUND プロジェクト』。「障害の有無に関わらず誰もが遊ぶことができる遊具」という医療や遊具などの垣根を越えた試みでした。
2024年度、グッドデザイン大賞はどちらかと言えばプロダクトデザイン寄りの内容でしたが、建築関連はどのような受賞結果だったのでしょう? 今回はグッドデザイン賞の中でも、特に優れたデザインと認められた「グッドデザイン金賞」に焦点を当ててご紹介します。
多世代共生の複合型福祉施設「深川えんみち」
写真提供:公益財団法人日本デザイン振興会
東京都江東区深川にある複合型福祉施設。高齢者デイサービス・学童保育クラブ・子育てひろばの3つの事業が行われています。手がけたのは成瀬・猪熊事務所出身の長谷川駿氏、Eureka出身の猪又直己氏、清水建設出身の内田久美子氏の3名からなる設計事務所JAMZA。日本財団みらいの福祉施設建築プロジェクト2021の採択を受けてはじまった豊かな地域づくりのプロジェクトです。
道に面した大きな開口部がある1階は高齢者デイサービス、2階に学童保育と子育てひろばがあります。自然素材を活用しており、どの空間も旧斎場を改修した建築物とは思えない温かみのある雰囲気です。
評価されたのは世代間交流を促す施設である点。施設の中に“道”をつくり、日常的に接点の生まれにくい世代の利用者同士が顔を合わせる動線としています。
また、時間ごとに使い方を変えることで、多世代が一つの建物に集うタイムシェア的な在り方も魅力。誰もが集える場として施設図書館やまちキッチンなどを設置するなど、従来の福祉施設の枠を超えた設計です。
障害者シェアハウス+シェア店舗「はちくりはうす」
写真提供:公益財団法人日本デザイン振興会
障害者自立支援のための居宅介護事業所とショートステイルームを併設する障害者シェアハウス。東京都目黒区にあり、1階には複数のオーナーが飲食店を出店するシェア店舗、屋上にはテラスや家庭菜園スペースも設けられています。
設計・デザインを手がけたのは、過去にグッドデザイン賞を幾度も受賞している株式会社グッドスタジオ。プロジェクトの発端は「脳性麻痺の我が子に環境と人の繋がりを遺したい」という施主の思い。障害者の自立支援を行うNPO法人「はちくりうす」協賛の元、「建物内で関係が閉じた従来の施設」ではなく、障害者と仲間が一緒に地域の人とふれあえる場を作ることを計画しました。
外観は、積み木を重ねたかのような遊び心を刺激する雰囲気。屋内は1階から最上階の4階まで吹き抜けの階段になっており、どこにいても人の気配を感じられる空間です。介護用機器の無機質な印象を軽減させるため、天然木や漆喰といった一般住宅用の建材も積極的に採用しています。
旗竿地の課題を解決した集合住宅「天神町place」
写真提供:公益財団法人日本デザイン振興会
東京都文京区、高層ビルに囲まれた旗竿地にある賃貸集合住宅。ビルに囲まれた立地のため日照の確保が課題でしたが、U字型で中庭を囲む形状にすることで、各住戸は周囲のビルの隙間と中庭の両方から光を得ることができています。
中庭に入る光を強調するため、中庭のコンクリート外壁に配しているのが丸太材。こちらは間伐材や林地残材を買い取ることで健全な森を維持しようとする“木の駅プロジェクト” で集められた丸太です。
また、各住戸は異なる間取りとなっており、各部屋や時間によって光の移ろいが異なります。中庭を通して光や風を共有することで、居住者たちが緩やかな繋がりを意識できる点も評価されました。
コミュニティ参加型による地域環境整備「CACP ''Designing?''」
写真提供:公益財団法人日本デザイン振興会
中国四川省の成都市、老朽化した住宅団地で進められたプロジェクト。地域の放置自転車置き場が、住民のための公共スペースに生まれ変わりました。
その特徴は、全工程において地域住民が参加していること。ボランティアスタッフでも簡単に組み立てられる構造であるほか、建築材や家具には地元の素材、リサイクル品などを活用しています。
建物は周囲への太陽光の反射を防ぐため屋根に緑を配し、さらには屋外空間や近隣施設と調和させるため、ジグザグに回転するユニットを用いて外と中の境界線を曖昧にするなどの工夫も。地方から大量の人口が流れ込む大都市のなかで地域環境を整備しただけでなく、コミュニティ参加型の実践可能なまちづくりのモデルケースでもあることが評価されました。
2024年度のグッドデザイン金賞、建築関連の受賞は以上の4つでした。どのプロジェクトも優れたデザイン・設計の建築物であることはもちろん、さまざまな社会課題を解決するモデルケースでもあります。これから新しい建築物を考える際のヒントも詰まっていますので、気になるプロジェクトがあれば、ぜひ直接足を運んでみてください。
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