公開日:2025年2月10日
(更新日:2025年9月13日)
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建築設計事務所にはさまざまなカテゴリーがあり、タイプごとに強みや受注するプロジェクトが異なるため、社員の働き方にも違いが生じます。就職後に「想定していた仕事内容と違う」といったミスマッチを防ぐためにも、求人応募の前にどのような設計事務所なのかを考える必要があるでしょう。
大まかに「組織系」と「アトリエ系」の2つに分けられることが多いですが、他に「地域密着系」「専門特化系」「オールラウンド系」といったタイプに分類されることも。今回は、5タイプそれぞれの特徴や得意とする施設などをご紹介します。
まずは、一般的に知られる組織系・アトリエ系設計事務所にはどのような違いがあるのでしょうか?
組織系建築設計事務所とは?
設備・構造・意匠・エンジニアリングシステムなどを自社内で設計し、工事現場での施工管理も担う、大規模な建築事務所です。「グループ系」と「独立系」の2つに細分化されます。「グループ系」は、所属するグループ企業が担当するプロジェクトを中心に設計を行う事務所。独立した企業である「独立系」は、グループによる縛りがないため幅広い案件を扱います。
■組織系設計事務所の特徴
- 手掛けるのはマンションや商業ビル、オフィス、公共施設など、中規模以上の事業物件
- 国内の主要都市や海外に支社・支店がある場合が多く各エリアでの依頼を請け負う
- プレゼンテーションと交渉のスキルが高く、堅実なデザイン能力にも優れている
- 社員の服装は、スーツやスーツ型作業着が一般的(チノパン+ジャケットのような、比較的ラフな服装をOKとする企業も)
アトリエ系建築設計事務所とは?
建築家のオリジナリティとセンスを活かしたデザインや意匠を強みとする事務所。数百人の社員を抱える大きな企業も増えていますが、社員数が数人~数十人という小規模な個人事務所が大半です。
■アトリエ系設計事務所の特徴
- 主に小規模な公共施設や店舗、住宅を中心に手掛ける
- 著名な建築家が主催する事務所では大規模な案件を扱う場合もある
- オリジナリティの高い建築を施工主から依頼されることが多い
- 服装は一般的に、襟付きのシャツ+チノパン(派手でなければ柄物も可で、オフィスカジュアルの範囲ならファッションを自由とする企業も多数)
組織系設計事務所とアトリエ系設計事務所は、企業自体の規模感やプロジェクト遂行の上でのそれぞれの強みに違いがありそうですが、次は取り扱うプロジェクトの違いから他の建築設計事務所のタイプの違いを見ていきましょう。
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地域密着系の建築設計事務所とは?
事務所を構えている地域に根差して依頼を受けていることから、地元のお客様と距離感が近く、地域の生活やニーズ、価値観などさまざまな情報に詳しい事務所です。デザインや設計への向き合い方に柔軟性があり、施工主の希望はできる限り反映させます。
■地域密着系設計事務所の特徴
- 地域の風土と気候に合わせて、建築物の耐久性や居住性、デザイン、構造を提案する
- 地元の素材や伝統技術、工芸品などを採り入れ、建築や設計をすることも多い
- 地域活動を通じて住民とコミュニケーションを深め、ニーズや流行を把握することも
- 地元住民との信頼関係を築いていることで、安定的な依頼数を維持できる
専門特化系の建築設計事務所とは?
商業施設や居住施設、医療施設、物流・生産施設、福祉施設など、特定の建物の設計が得意な事務所です。特定の用途施設に豊富な設計実績や専門知識を持ち、独自のスキルや情報も有しています。
■専門特化系設計事務所の傾向※一例
- 大型店やホテルなどの商業施設に特化した事務所は、インテリアの設計や外観のデザインに力を入れている
- 居住施設に特化した事務所は、大規模なタワーマンションからアパート、社員寮まで、さまざまな住宅の設計に関する技術が集結している
- 医療施設を数多く手掛ける事務所には、医療機器などを配置するための複雑な設備計画に対応するノウハウがある
- 物流や生産施設を得意とする事務所には、多彩な規模の倉庫や工場を手掛けられる深い知見がある
- 幼児施設、高齢者施設、障害者施設などを扱った実績が豊富な事務所は、福祉施設の設計に長けているだけでなく、補助金の申請など業界知識にも精通している
オールラウンド系の建築設計事務所とは?
企業独自の基本方針を定めつつも、時代や社会情勢の変化に応じて受注する案件や業務スタイルをその都度変えていく事務所です。特定の分野や規模に限定せず、多様なプロジェクトを請け負います。
■オールラウンド系設計事務所の特徴
- 臨機応変な応対力で依頼者のニーズを汲み取るため、顧客満足度が高い傾向がある
- 効率や生産性の向上にも注力し、社員がやりがいや働きやすさを感じられる事務所
- 設計の質は維持しながらも、設計スタイルはクライアントの要望にフレキシブルに対応するため、スケジュールや予算の面でもクライアントの希望に合わせやすい
自分の希望に合う建築設計事務所を見極めよう
建築設計事務所のタイプに応じて、仕事で携われる建物の種類や規模、クライアントとの関わり方などが異なります。転職や就職の際には、ご自身の目指す道や手掛けたいプロジェクト、得意な分野が何なのかを分析し、希望や適性にマッチする建築設計事務所を探しましょう。
FAQ:設計事務所への就職についてよくある質問
Q1:設計事務所の「組織系」と「アトリエ系」では、働き方や仕事内容にどのような違いがありますか?
A:「組織系」は中規模以上の案件が多く、意匠、構造、設備など各分野の専門家とチームで仕事を進めます。一方「アトリエ系」は、個人住宅や小規模な店舗などを中心に、建築家個人のデザイン性を重視した仕事が多くなります。自身のキャリアプランに合わせて、大規模プロジェクトで専門性を高めたいか、小規模でもデザイン性の高い空間づくりに携わりたいかを考えるのがよいでしょう。
Q2:特定の分野(商業施設や住宅など)の設計に特化したい場合、どのような設計事務所への就職を目指すべきですか?
A:商業施設、医療施設、住宅など、特定の建物の設計に強い興味がある場合は「専門特化系」の設計事務所がおすすめです。特定の分野に関する豊富な実績や専門知識を持っているため、その分野のプロフェッショナルとして深いスキルを身につけることが可能です。求人情報を探す際は、事務所のウェブサイトで過去の実績(ポートフォリオ)を確認すると良いでしょう。
Q3:まだ明確にやりたい建築の方向性が決まっていない場合、どのような設計事務所が就職先としておすすめですか?
A:特定の分野に絞らず幅広く経験を積みたい方には「オールラウンド系」の設計事務所が適しています。オールラウンド系の事務所は、特定の分野や規模に限定せず多様なプロジェクトを請け負うため、様々な種類の建築物に携わるチャンスがあります。働きながら自身の適性や興味のある分野を見つけていくことができるでしょう。
Q4:地方や地元での就職を考えている場合、どのような特徴の設計事務所を探すと良いですか?
A:地域に根ざした働き方を希望する場合、「地域密着系」の設計事務所が最適です。その土地の風土や文化を活かした設計や、地元の素材や伝統技術を採り入れた建築に携われる可能性があります。地域の住民やコミュニティとの繋がりを大切にしながら、その土地ならではの建築設計の仕事ができるのが大きな魅力です。
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