公開日:2021年11月25日
(更新日:2025年6月4日)
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少子高齢化や新築住宅の供給減少を背景に、急成長を続けるリノベーション業界。国土交通省が2024年に発表したデータでは、全国の空き家は約900万戸に上り、政府の既存物件活用施策によってリノベーション需要は今後も拡大が見込まれます(参考:総務省 令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果)。
現在の市場規模は7兆円以上あり、今後も緩やかに成長を続けると予測されるリノベーション業界では、設計職の求人も増加中。未経験者を積極採用する企業もあり、ますますキャリアチェンジのチャンスが広がっていくでしょう(参考:株式会社矢野経済研究所 住宅リフォーム市場に関する調査を実施(2024年)。 )
そこで本記事では、リノベーション設計の仕事内容、魅力、転職方法、必要な資格を詳しく解説します。
リノベーション設計の仕事内容とは?
リノベーションとは、中古住宅や商業施設の価値・機能を向上させる改修工事。間取り変更、照明・窓の追加、最新設備の導入など、小規模な改装から大規模なリノベーションまで多岐にわたります。リノベーション設計の仕事は、お客様の要望を形にする設計業務が中心。以下は、業務の流れを8ステップで解説します。
1. 現地調査
物件を訪問し、採寸や設備(配管・電気系統)の状態を確認。既存の構造や使用可能な部分をチェックし、設計の基礎情報を収集します。
2. お客様へのヒアリング
お客様のニーズ(例:不便な点の解消、導入したい設備)を詳細に聞き取ります。要望の食い違いを防ぐため、ライフスタイルや予算も含めて多角的に質問。丁寧なコミュニケーションが求められます。
3. 図面作成
ヒアリング内容や現地調査のデータをもとに、CADやBIMソフトを使用して設計図面を作成。設備や素材を選定し、施工会社がスムーズに工事できる詳細図面も準備します。
4. 見積もりの作成・契約
工事内容に基づく見積もりを作成し、お客様に提案。予算超過の場合は代替案を提示し、納得いただけるプランを調整。合意後、契約を締結します。
5. 工程表の作成
着工から引き渡しまでのスケジュールを計画し、工程表を作成。お客様、施工会社、物件管理会社と日程を調整し、必要に応じて資材発注も行います。
6. 工事現場の監理
職人による工事の進捗を監視。工程表通りに進んでいるか、設計図との相違はないか、近隣からのクレームがないかを確認。状況に応じて工程を調整します。
7. 完成・引き渡し
完成後、設備や仕上がりを検査。不備があれば是正工事を行い、最終確認後にお客様に物件を引き渡します。
8. アフターフォロー
引き渡し後、お客様が住み始めてから不具合が見つかる場合に対応。丁寧なフォローで信頼を築き、将来的な追加依頼につながることもあります。
リノベーション設計の魅力とやりがい
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リノベーション設計の最大の魅力は、物件が生まれ変わる瞬間に立ち会える達成感。お客様の要望を形にし、「理想の住まいになった」と喜ばれることで、大きなやりがいを感じられます。たとえば、古いマンションを現代的なオープンキッチンやバリアフリー仕様に変えることで、家族の生活が豊かになる瞬間に貢献できるでしょう。
また、サステナブルな建築や空き家活用に貢献できる点も魅力。リノベーションは新築に比べCO2排出量を大幅に削減可能であり、SDGsに直結する仕事です。さらに、物件ごとに異なる条件や制約をクリアする創造性と問題解決力が磨かれ、スキルアップも実感できるでしょう。
リノベーション設計の主な職場
リノベーション設計の職場は多様で、以下のような企業が活躍の場を提供しています。
ディベロッパー
マンションや商業施設のリノベーションを担当。自社グループ内にリフォーム部門を持つ企業が多いです。
住宅メーカー
自社で建てた住宅のリノベーションを中心に、戸建てやマンションを改修します。
鉄道会社
自社物件や商業施設の大規模リノベーションを展開。デザイン性の高い案件も多いです。
家電量販店
システムキッチンやバスルームなど、設備特化のリノベーション。施工は協力会社が担う場合も。
独立系企業
店舗、戸建て、マンションなど幅広い物件を扱います。物件探しから施工まで一貫して請け負う企業も。
ホームセンター
水回りや内装のリノベーションに特化。地域密着型の案件が多いです。
企業の規模や得意分野により、扱う物件や業務スタイルが異なるため、自身の興味やスキルに合った職場を選ぶことが重要です。
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リノベーション業界の採用動向と将来性
2025年現在、リノベーション業界は空き家問題やサステナビリティ需要の高まりで求人が急増しています。特に、設計アシスタントやプロジェクトマネージャーのポジションが人気です。
政府の「住宅ストック循環利用支援事業」などにより、中古物件のリノベーション支援が強化され、業界の成長は今後10年以上続く見込み。未経験者向けの研修制度を設ける企業も増えており、異業種からの転職のハードルが下がっています。
リノベーション設計に未経験から転職する方法
建築業界に限りませんが、求人の数は資格所持者や経験者を対象とするものが多く、リノベーション設計職への転職も建築系の学歴や職種経験があるほうが有利です。とはいえ、前述したようにリノベーションの需要が高まっていることもあり、未経験でも応募可能な求人も少なくはありません。
以下のようなステップでキャリアアップを目指すことができるでしょう。
1. 未経験者可の求人を探す
業界未経験でも歓迎する求人を探しましょう。未経験可で多いのは個人住宅を対象とするハウスメーカーやリフォーム会社の求人。建築やインテリアの知識がなくても、現場で一から学べる環境があるのが魅力です。
最初から設計者を目指すことが難しい場合は、顧客対応メインの仕事などでリノベーション業界に関わる経験(建材メーカーやショールームなど)を積み、設計の知識やノウハウを身につけるという選択肢もあります。
2. 他業界の経験を活かす
リノベーション設計職は顧客対応を含むのが一般的。未経験可の求人では、歓迎要件として営業や接客の経験が挙げられていることも多いです。営業や接客の経験がある方は、コミュニケーション能力を培ってきたことをアピールしましょう。
3. スキルアップと転職を目指す
未経験OKの仕事に挑戦しながら、建築やインテリアの知識を学び、スキルアップを目指しましょう。経験を積んだ後、設計職へのステップアップを目指す転職活動を始めます。
4. 資格取得も視野に入れる
資格取得は、知識や専門性を証明し、より専門性の高い仕事へのステップアップにもつながります。リノベーション設計職では、建築士やインテリアコーディネーターなどの資格があると、より幅広い業務が可能ですし、転職の際にも有利です。
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リノベーション設計の仕事に必要な資格
資格は必須ではありませんが、以下の資格は採用や業務の幅を広げるのに役立ちます。
建築士(一級・二級)
建築・リノベーション業界で設計に携わりたい場合は、ぜひ取得を目指したい資格。転職時の大きなアピールポイントにも。特に構造設計や大規模案件に携わる際は必須の資格です。
インテリアコーディネーター
住宅の内装設計や顧客提案で強みを発揮。未経験者でも取得しやすいのがポイントです。
インテリアプランナー
建物の設計段階から携わり、内装の計画、設計、工事監理まで、室内空間をトータルに設計・管理できる資格です。
宅地建物取引士
土地や建物の専門知識を身につけ不動産の売買や賃貸借契約などを円滑に進めるのに役立つ国家資格。物件探しからリノベーションまで一貫対応が可能になります。
リノベーションアドバイザー
中古住宅流通とリノベーションの提供に必要な知識を総合的に学ぶことができる資格です。
マンションリノベーションコーディネーター
マンションの構造や設備、法的規制、施工に関してなどマンションリノベーションの現場において必要な知識を学べます。
資格取得には時間や費用がかかるため、まずは業務に直結するスキルを優先し、働きながら学ぶのが現実的です。リノベーション業界は、環境問題や社会課題の解決に貢献しながら、クリエイティブなキャリアを築ける魅力的なフィールド。未経験からでも一歩踏み出せば、設計職として活躍するチャンスが待っています。ぜひ就職・転職を考えてみてはいかがでしょうか。
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